
Contents
1. ぽにょとの出会い
2. 驚きの診断
3. 手術の記録
-2025.01.29
-2025.04.24
-2025.05.10
-2025.05.24
4. まさかの追加手術へ
-2025.07.18
5. 皮膚の問題とアレルギーとの闘い
6. 最後に
1. ぽにょとの出会い
ぽにょは、2024年12月の寒波の日に愛護センターから引き出した保護犬です。フレンチブルドッグの女の子で、当初の推定年齢は10歳。
狭いところにずっと閉じ込められていたのか関節にはタコができ尻尾がどこかも分からないほどで、後ろ足は常に曲がっており、膝蓋骨は外れたまま。
不自然に曲がった足とおぼつかない足取りで一生懸命歩いていました。
さらに皮膚は真っ赤で、全身からフケが落ち、足先や陰部は真っ赤に腫れていて、耳は耳血腫で変形していることからも全身にひどいかゆみがあると思われる状態でした。
あまりの寒さと不安からかと思いますが、収容時に吐いていたことからも状態があまりよくないかもとの印象を受けました。
こんな寒い中、不安な環境で最期を迎えるのはあまりにも悲しすぎる…と思い、お看取りも覚悟しての引き出しでした。

2024年12月24日に愛護センターからやってきたぽにょ。
寒い寒波の時期に外に出されてふらふらしていたところを捕獲されました。
状態が悪くセンターからの申し送りでは、推定年齢は9歳~10歳。


どんな場所にいたのか…
アレルギー症状で腫れ上がる陰部と関節などいたるところがタコだらけだった時
2. 驚きの診断
引き出してすぐにかかりつけの獣医さんに診てもらったところ、驚くことに「歯がまだ白く綺麗で、推定年齢は2~3歳ではないか」とのこと。
まさかの若さに喜んだのもつかの間、次々と問題のある健康状態が明らかになりました。
呼吸の問題
・鼻腔狭窄症
・軟口蓋過長症
関節の問題
・重度の膝蓋骨脱臼

鼻腔狭窄で鼻の穴がコンセントの入り口程度しかなく呼吸が苦しかった頃。
いびきもすごく、ただ呼吸しているだけでブヒブヒ苦しそうな呼吸音がしていました。
ただ、あまりに痩せていたので、手術の前にもう少し体の状態を整えなければとまずはそこからスタート。
飢餓状態だったのか、食欲は旺盛でなんでもよく食べるのですが、食べすぎるとすぐ消化不良になるのでなかなか太れず一進一退の日々でした。

医療処置より、まずはしっかり食べて体調整えての期間。
ご飯は楽しみでキッチンでご飯待ちするくらい食欲旺盛!

体重も6㎏しかなく、肋骨が浮き出ていました。
あまりに痩せていて避妊手術も延期に…
皮膚の状態も悪く、アレルゲン除去のフードを試したり、週に2回保湿浴を継続したりとありとあらゆることを試す試行錯誤期間に突入。

シャンプーした次の日にはすでにフケだらけ。
全身からフケが出続け週2回の保湿浴なくしてはいられないくらいでした 。

保湿しても保湿しても塊で皮膚がはがれてくるものの、赤みは落ち着いてきた頃。

温まると顕著に赤みが出て、いつもどこか掻いていた期間が長く続きました。
特に鼻のシワと足先は血が出るほどで、投薬、週2回の保湿浴や毎日の保湿などを継続。

なかなか進まないトイレトレーニングと制服化していた皮膚保護服時代。
トイレトレーニングはペットシーツという概念ゼロの状態からのスタートでした。

朝起きたら犬用トイレへ

おむつも併用
3. 手術の記録
2025年1月29日
手術内容
・軟口蓋切除術
・鼻腔拡張手術
私の仕事の都合で指定日に病院に行けないことから、かかりつけの獣医さんが定休日にぽにょを外科専門病院に連れて行ってくださり、そのまま1泊入院させ様子を見たうえで帰宅させてくださるというVIP待遇で手術が終わりました。
術後、保護時からずっと続いていた苦しそうな呼吸音はなくなり、いびきもほぼなくなりました。
そして何より、出されたものは何もチェックせず指ごと食いついてきていたのに、においを嗅いでから食べ物を食べるようになりました。
そのおかげで、粉末の薬を混ぜたり、薬を複数ご飯に混ぜるとよくよくチェックしてはじくようになり、投薬問題が勃発するという嬉しい変化もありました。
見た目も明らかに鼻の穴が大きくなっています。

普通に息ができる、こんな当たり前のことが当たり前でなかったぽにょ。
これでこの夏に苦しい思いを重ねないで済むという安堵とたくさんの人のご支援のおかげて手術ができたこと感謝しかありません。

鼻腔拡張手術後。
まだ鼻に糸がついていますが、鼻の穴が大きくなり気持ちよく寝られるように。

その後、避妊手術と併せて鼻の抜糸もしてもらい鼻の手術は完了!
鼻腔拡張手術の時の同時検査
CT撮影にて以下を確認:
・両側股関節形成不全
・両側膝蓋骨内包脱臼
→ 今後、複数回の手術が必要なことが確定。
結果は思ったよりも悪く、膝が外れているのは、骨が曲がっていて角度がおかしく、はまりようもない状態だからとのこと。
前十字靭帯も損傷しているだろうこと、そして左の股関節は形成不全が深刻で45度ほどずれていることが判明しました。
膝も正しい角度と比べると15度ほどずれており、常に脱臼している状態であることから痛みがある状態と推測されるという診断でした。
最近はフリーで家の中を歩き回ったり、お散歩も少しずつ練習し筋力もついてきていたのでちょっと期待していた分、左の股関節・両膝とも手術適応という診断は大きなショックでした。
ぽにょ1匹のために、複数回にわたるこんな高額な手術はできないのでは、という思いもあり手術をしないとどうなるのか質問もしました。
当たり前ですが勝手に治るものではなく、どんどん悪くなっていく可能性については、素人が聞いてもそれはそうだろうと思うものでした。
膝だけ手術をすると、しっかりはまるようになった膝からきちんとテンションがかかるようになり股関節が持たないことから、膝のみを手術するという選択肢はありません。
そうすると選択肢は3つ。
①股関節全置換(人工股関節)+両膝手術
②股関節は骨を削る応急処置のみ+両膝手術
③手術はなし
外科専門病院の院長であり執刀医である木村先生も金額面で多大なご配慮をくださることとなり、ちばわんにその旨もあわせて相談をし検討したところ、必要な手術ならしましょうとの方向になりました。
普通ならあり得ないような高額な大きな手術、かつ難易度の高い手術を経験数も含めてトップクラスの先生にしてもらえるという奇跡が起こりました。


後ろ足の膝関節は外れたままで、常に変な方向に曲がっています。
2025年4月24日
手術内容
・左股関節全置換術(根治目的)
【術後管理】
・6週間の絶対安静
・ケージレスト
・エリザベスカラー着用
・投薬と清潔環境の維持
人間だとしても大きく難しい手術にドキドキしながら送り出しましたが、「完ぺきにできました」と術後連絡がきて大成功の結果となりました。
術後4日目に元気に退院してきたのですが、お迎え時に私がクレート内のぽにょに声をかけたら喜んで中で暴れてしまい、こういう声掛けすら絶対安静という意味ではリスクになるということを知り反省。
術後は後ろ足で立つことはもってのほか、犬は指示が伝わらないため変な角度に曲げてしまうことのないよう狭いケージで絶対安静が6週間続きます。
とにかく安静にさせるために安定剤も処方され、あまり声掛けもせず、興奮させないよう気を張っていましたが、そもそも狭いところで閉じ込められていたのでは、と推測されるぽにょは自分からおとなしく毎日を過ごしています。
ベッドも足への負担から介護用の薄くて沈まない素材のものにし、水入れもエリザベスカラーをしてても飲めるよう高さと角度のついたものにしたり、少しでも快適に安全に過ごせるようにと試行錯誤で無事に次の受診日を迎えました。


そして検査があるからと朝ごはん抜きで迎えた次の診察日、歩行チェックで軽快に歩いて見せたぽにょは、経過が良いのでとそのまま右膝の手術になるのでした…

ちーん
2025年5月10日
手術内容
・右膝蓋骨内方脱臼整復術
– 大腿骨矯正骨切り術
– 内旋制動術
【術後管理】
・3ヶ月間の安静
・6ヶ月間、激しい運動はNG
2025年5月24日
手術内容
・左膝蓋骨内方脱臼整復術
– 大腿骨矯正骨切り術
– 脛骨高平部水平化骨切り矯正術(m-CTWO)
ボロボロだったぽにょは、何度もの麻酔・手術を乗り越えてくれました。
術後も不自由な身体で文句ひとつ言わず、ただひたすらケージで静かに佇んでこちらを見ている姿に、涙が出る思いでした。
「今度こそ楽になるために」「痛みのない未来のために」と信じて続けた治療の日々でした。
そして、やっと少しずつケージの外に出て少し歩くこともできるようになってきました。

傷を舐めない子だったので、少しでも快適になるよう色々なカラーをお試し中

リビングに出てきてお昼寝
4. まさかの追加手術へ
2025年7月7日
両足の手術後の経過観察としてレントゲン撮影を実施しました。
これまで「手術はギリギリ回避できた」と診断されていた右側の股関節に、明らかな痛みとレントゲン上での骨の接触が確認されました。
実際、レントゲンで見える以上に触診でぽにょは痛がっており、歩き方もどこか不自然でした。
すでに両足の手術を終えている影響で、後ろ足を軽くかばうように歩く姿が見られ、右側の太ももの筋肉が明らかに細くなってきていました。
これは術後の経過とも見えていましたが、「痛みで足をしっかりつけない状態」だと診断され、手術適応となってしまいました。
ちばわんに連絡し、金銭的負担が大きいことも含めて相談したところ、「すぐに手術をしてあげてください」との快諾をいただき、最短日程での手術が決定しました。
2025年7月18日
手術内容
・右股関節形成不全(根治目的)
・股関節全置換術(右側)
【術中所見】
股関節の円靭帯が断裂していたことが判明。痛みの主な原因はここにあったとみられます。
【術後管理】
・4日間入院
・退院後は6週間の絶対安静
・ケージ内での静養、感染予防のための薬、安定剤の投与が継続
手術を終えたぽにょは、預かり宅に帰ってきたことがとても嬉しかったようで、短いしっぽをふりながら狭いケージの中で健気に頑張っています。骨がしっかりつくまでの間、静かに安静に過ごしています。


ぽにょの足にはたくさんの金属がはいっています。
人間でもここまでやるのは大大手術。
保護犬のぽにょがここまでの治療ができたことは奇跡です。
5. 皮膚の問題とアレルギーとの闘い
ぽにょには、手術とは別に皮膚の慢性的な症状がありました。
保護当初から:
・全身にフケ
・強いかゆみ(特に足先や鼻のシワ、陰部、耳)
・脂漏症のようなにおい
◎ 食事管理と改善の兆し
2025年5月、手術による入院の際に系列病院の皮膚科専門医に診てもらった結果、以下の診断が下りました。
・アトピー性皮膚炎
・脂漏症
・食物アレルギーの疑い
そこで、アレルゲン除去食(ニシン&
ポテト)を8週間継続することに。

すると、鼻のシワや足先のかゆみが劇的に軽減。まさに食事の影響であることが明確になりました。
それまでの経過を振り返ると、保護直後から除去食を意識してはいたものの、おやつには馬肉や鶏肉、ヤギミルクなども与えており、サプリのカプセルにも牛由来のコラーゲンが含まれていました。
さらに、2025年4月後半にフードをラムベースに変更したタイミングで、皮膚の状態が急激に悪化してしまっていました。
アポキル(アトピー対応するかゆみ止め)も効かず、痒みのコントロールが困難な状態でした。

左が鼻のしわ用の塗り薬、右が足先用の塗り薬。
この二つも同時に処方してもらっていました。
シャンプーは月2回、保湿浴を週2回続けるなどのケアも並行して行っていましたが、結果として、フードが劇的に効果をもたらした形です。
◎ 除去食による経過と再診
ニシン&ポテトのアレルゲン除去食を8週間続けた後、皮膚科専門医を再受診。
診断は初診時と変わらず、
・アトピー性皮膚炎
・ 脂漏症
・食物アレルギーの疑い
とのことでした。
除去食によって鼻のシワや皮膚全体の炎症は大きく改善しましたが、足先のかゆみだけがどうしても残っている状態。
「ここまで改善したからこそ、足先のかゆみも何とかしてあげたいですね」と獣医師から提案があり、再度治療内容を見直しました。
このとき、皮膚のブドウ球菌の量が多かったことが確認され、足先に対する治療を強化することになりました。
◎ 足先の治療内容(術前から継続中)
・塗り薬(朝晩2回):感染や炎症を抑える処方薬に変更
・専用シャンプー(週2回):脂漏症傾向のある犬向け。
皮脂汚れをしっかり落とす動物病院専用シャンプーを使用。
・ 保湿:シャンプー後には、低刺激の保湿剤を塗布し、乾燥や再炎症を防止
塗り薬
シャンプー、保湿剤
ただし、直後に控えていた股関節置換術(2025年7月18日)の後は、絶対安静期間があるため、通常のシャンプーができません。
そこで、術後は以下の対応でスキンケアを継続することとなりました。
◎ 術後のケア(シャンプー制限期間中)
・動物病院専用のスキンケアシートを使い、足先を優しく拭くことで清潔を保つ
・必要に応じて、塗り薬や保湿の継続
・ケージ内でもできる範囲でフォーム状の洗い流さないシャンプーでのケアを徹底
スキンケアシート
ぽにょの皮膚症状、特に足先のかゆみ・炎症に対しては、食事管理やシャンプーだけでなく、日々のスキンケアが重要な治療の一環です。
薬や清拭、塗布タイミングなどに気をつけながら管理を続けています。
◎ 今後の予定と希望
今後もアレルゲンの特定のために食物負荷試験を行っていく予定です。
ラムにアレルギーがあることは確定的で、牛・ヤギミルクも要注意とされています。
今は、おやつはさつまいものみですが、
術後に薬の多い期間は、焼き芋にお薬を混ぜて与えており、「お薬を楽しみにしているのか、焼き芋を楽しみにしているのか…」というほど喜んで食べてくれます。
現在の服薬内容:
・ アポキル(アトピー性皮膚炎薬)
・足先用の塗り薬
今後の希望は、ひとつでも食べられる食材が見つかり、大好きなご飯の時間が楽しくなること。
そして、おでかけやトレーニングの際に喜んで食べられるおやつがみつかることです。
6. 最後に
ぽにょは、満身創痍とも言えるボロボロの身体で保護されながらも、明るく強く生きようとする意志を持っていました。
命の重み、選択の責任、治療の難しさ、そして何より「どんな時も楽しく生きること」をこの子から教わった気がします。
4度の大きな整形外科手術と、鼻の手術、皮膚・アレルギーの継続的な治療を経て、ぽにょは少しずつ、確実に「生きやすい体」に近づいています。
人間によってたくさんの疾患を抱えて生まれ、たくさんの治療を乗り越えながらも、短いしっぽをふるその姿に、私自身が何度も救われました。
これからも長いケアは続きますが、ぽにょのペースで、ひとつずつ乗り越えていければと願っています。
今回、ぽにょには⾼額な医療費がかかっています。
それでも、ちばわんから「この1匹のために」と、必要な医療を迷わず選ばせてもらえました。
ちばわんでは譲渡の際に一律のご負担金をいただいていますが、それだけでは到底まかなえません。
いぬ親会でのご寄付、譲渡時のご負担金、チャリティーグッズ売上、そして日々いただく皆さまからのご寄付。
ここまでのことができたのは、⽇頃からたくさんの⽅々のご⽀援があったからこそです。
その中から、ぽにょに新しい⽝⽣を歩ませるための医療費として出してもらったことは感謝しかありません。
ぽにょには以下のような医療を受けさせてもらっています。
・かかりつけ医での避妊手術、予防薬、体調不良時の診察と投薬
・外科専門病院での整形外科4回(股関節2回・膝2回)の手術
・鼻腔狭窄・軟口蓋過長症の手術
・入院費、術前検査、抜糸、経過観察のレントゲンや診察、CT検査
・皮膚科専門医による診察、検査、薬、シャンプー、保湿剤、処方食
アポキルというアトピー性皮膚炎の薬は高額で、今後も継続して飲む必要があります。
食物アレルギーの負荷試験も続き、皮膚の状態に応じて皮膚科への通院も続きます。
また整形外科の術後診察も、2年間のフォローが予定されています。
これからも医療費はかかっていきますが、それでもここまでの医療を提供してもらえたこと、命を「助ける」ではなく、「犬生を作り直す」ところまで支えてもらえたこと、本当に感謝というひと言では表せないほど感謝しています。
最後に、ぽにょのために費用面においても多大なご支援、手術の執刀と術後のケア、治療方針・相談まで親身にかかわってくださった動物外科診療室 東京 Vet Surg Tokyoの院長 木村太郎先生となないろ動物病院の院長 服部真澄先生、そして皮膚科専門診療で親身に相談に乗ってくださり総合的な治療をしてくださっているAnimal Clinic Liko 早稲田動物医療センター院長の門岡友子先生にこの場を借りて厚く御礼申し上げます。
また、お名前を挙げきれませんが、支えてくださったすべての方々に、心より感謝を申し上げます。
この記録が、同じように保護犬と向き合う方々の助けや励ましになりますように。
ぽにょの様子は、Instagram @tsunko1231で更新しています。
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